PaoChaiでは中国語を“話せる、聞ける”ようになるための学習において、「リピーティング」というトレーニングを重視しています。リピーティングは、“話せる、聞ける”ようになるために効果があるだけでなく、学習者の会話力を可視化できる大変優れたトレーニングです。
- 1.中国語のリピーティングとは?
- 2.リピーティングの学習効果
- 3.学習における最大のメリット
- 4.リピーティングをするときの注意点(正確に繰り返す)
- 5.リピーティングとシャドーイングの違い
- 6.リピーティングにオススメの教材
- まとめ
1.中国語のリピーティングとは?
中国語学習におけるリピーティングとは、「中国語音声を聞いた後、それを同じように繰り返し発話するトレーニング」です。
「音読」と「リピーティング」とは似ていますが、一番の違いは前者が目で見て読み上げるのに対して、後者は耳を通じて中国語の文を理解し、それからその中国語の文を繰り返します。
リピーティングはリテンション(保持)とも呼ばれます。聴いて理解した中国語を、そのまま繰り返します。トレーニングとしてリピーティングを行う際は、中国語の読み上げ音声にポーズ(休止)が小刻みに入った音声を使用します
(中国語の音声ファイルは次のアプリで再生すればポーズを入れることができます。これなしにはリピーティングのトレーニングはできませんので、要チェックです)
まず、モデルの中国語が1センテンス(あるいは1フレーズ)流れ、それを聴き取り理解し、ポーズの間にそのまま繰り返します。下の図のように行います。
■効果的なリピーティングのやり方
STEP1〜4
- リピーティングの音源の中国語スクリプトを精読します。
- リピーティングの音源を数回聴きます。
- リピーティングの音源の中国語スクリプトを30回程度、音読します。
- リピーティングをします(10〜20分程度)
一通りSTEP4まで終われば、次からはSTEP4だけでOKです。
次のようにリピーティングの難易度を調整しましょう。単語など最小単位の音でリピーティングができるようになったら、それを徐々に伸ばしていきます。単語、フレーズ位と徐々に音を増やしていき、最終的には一文を一度にリピーティングします。
レベル1:単語単位で音を止めながらリピーティング(無音検出0.3秒)
いきなり文単位でリピーティングするのは難しいので、一文を可能な限り短く分解してリピートしていきます。無音検出を0.3秒程度の設定するとできます。アプリを使ってポーズを入れてトレーニングする場合、厳密に単語ごと切り分けることはできませんが、トレーニングの効果に影響はありません。
レベル2:フレーズで音を止めながらリピーティング(無音検出0.6秒)
次は、フレーズです。無音検出を0.6秒程度の設定するとできます。
レベル3:一文で音を止めながらリピーティング(無音検出0.9秒)
最後に一文ごとにリピーティングします。無音検出を0.9秒程度の設定するとできます。
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以上のステップを踏んで、短い音から徐々に音を長くしていくことでリピーティングのハードルをさげ、より効率的に挫折することなく取り組めます。
2.リピーティングの学習効果
効果1:リスニング力(音声知覚)
PaoChaiでは、第二言語習得の分野で使われるモデルでリスニング力を考えています。相手の発話を聴いて「相手の意図がよく分かった」と感じたときには、私たちの脳は2つの処理をしていると考えます。
それが「音声知覚」と「意味理解」で、どちらか欠けていると相手の話を理解することはできません。
分かりやすく日本語に訳していますが、イメージが湧くのがベストです
音声知覚:耳に入ってきた中国語を、音として把握できる
意味理解:既に持っている文法や語彙の知識を使って、文(文章)の意味が理解できる
私たち(日本語母語話者)にとって、日本語の「音声知覚」は簡単です。意味不明な言葉を言われても、同じ音を繰り返していうことができます。我々が話が分からないと感じるときは、話題が難しい、単語を知らないなど、自分の知識が足りていないせいで「意味理解」ができていません。
つまり、私たちは日本語であれば「意味理解」に多くのリソースを使えます。しかし、中国語だとそもそも「何を言っているか聞き取れない=音声知覚ができていない」ことが問題になります。
リピーティングでは、ひとつひとつの母音、子音、声調を正しく聞き取れるようになるほか、ネイティブが自然なスピードで話すときに起こる「音声変化」にも慣れることができます。つまり「音声知覚」に役立ちます。
ひとつひとつの母音、子音、声調の発音トレーニングにもなりますが、音声変化、また文章全体のアップダウン、ポーズ、スピードなどにも効果的です。
自分が再現して発話できるようになれば、そのような中国語も聞き取れるようになります。
効果2:リスニング力(意味理解)
さらに、リピーティングは「意味理解」の能力も高めます。誰でも知っている中国語、「你好」と聞いて「ni3hao3...あー、こんにちは(お元気ですか)、のことか」と日本語に直す人はほぼいないでしょう。これくらい簡単な中国語であればすぐに頭のなかに挨拶のイメージが浮かぶのではないでしょうか。
聞きなれている中国語単語やフレーズなら、日本語を介さなくても理解できます。それが習いたての単語だったり、意味は分かるけど聞き慣れていないフレーズだったりすると、理解するのに時間がかかります。
繰り返し音声を聞いて自分でも声に出すことで、日本語に訳すというステージを少しずつ省けるようになります。また意味のカタマリごとにマネをするので、中国語をその語順のまま理解していく力もつきます。
このようにリピーティングはリスニング力アップに最適な学習法なのです。
正しい発音や抑揚、リズムが身につく
リピーティングでは、ネイティブの声が耳に残っているうちに、自分でマネして声に出しますよね。そのためスクリプトを見て自己流の発音で音読するよりも、格段に効果的な発音練習になります。
効果3:短期記憶力の効果
例えばHSKのリスニング問題では、30秒〜数分ほどの音声を聞いて、複数の質問に答えなくてはいけません。基本的にメモはできないので、内容を一時的に記憶しなければいけません。
短期記憶とは、比較的短い、「秒単位の時間しか保持されない記憶」です。
リピーティングでは、自分で声に出すまで(少しの間ではありますが)聞いた音を記憶しておきます。そのため短期記憶の強化に繋がります。
中国語で会話をする際の仕組みを考えてみると、この短期記憶が非常に重要な役目を果たすことが分かります。基本的に、会話の中で相手の話を聞く場合、その場で聞いた内容を脳内にある程度記憶しておく必要があります。
リピーティングでは音声を止めた後、自分の短期記憶だけを頼りにそれを繰り返して発話する必要があります。
一文ずつこの作業を繰り返すので、結果として短期記憶の強化ができます。これにより、中国語で会話する際により楽に耳から得た内容を脳内に短期記憶し、その次の発話内容を効率的に理解することができます。
効果4:長期記憶力の強化
リピーティングは、“話せる、聞ける”単語・表現を長期記憶化するという効果も期待できます。長期記憶とは、前の短期記憶に対する言葉で、比較的長い期間脳に保持される記憶です。
実は、中国語の単語・表現をしっかり記憶し、“話せる、聞ける”レベルにするにはそれらの情報を長期記憶化しておくことが必要です。
中国語の単語・表現を長期記憶化して“話せる、聞ける”状態にするには、それらを含んだ文を構造と意味を理解しながら発話を繰り返すことが重要です。
基本的にリピーティングでは、何度も繰り返し文章を聞いて、それを発話することを繰り返しますので、会話でも活用できる単語・表現を自然と長期記憶化することが期待できます。
効果5:スピーキング(中国語化、音声化)
リピーティングをしていると、今まで「なんとなく概要は理解できた」と感じていた音声のなかにも、聞き取れていなかった単語や発音できていなかった音があることに気がつきます。
リピーティングで、中国語の正しい発音や抑揚、リズムを習得する効果も期待できます。リピーティングを通して繰り返し音声を聞くこと、そしてそれをまねて発話を試みることで、それらの自然な形を学ぶことができるのです。
3.学習における最大のメリット
可視化しずらい“話せる、聞ける”中国語力ですが、高い“話せる、聞ける”中国語力とは、何を聴いても完璧なリピーティングができることです。
これができるか否かで自分の“話せる、聞ける”中国語力が明確に把握できます。
4.リピーティングをするときの注意点(正確に繰り返す)
中国語を聴いて理解した後、ポーズの間に繰り返す時、一言一句正確にリピートしてください。だいたい同じことを言うだけでは、正確なリピーティングではありません。
リピーティングができず何となく中国語を聞き取っている状態というのは、実は中国語の文を完璧に聴き取り理解しているわけではなく、話の流れや、聞き取れたフレーズや単語によって意味を推し量る「推測聴き」をしているのです。
推測聴き自体は必ずしも排斥されるべきものではありません。外国語の聴き取り能力が母国語並になることは至難ですから、常に発展途上にある我々は話の難度や内容によっては推測聴きに頼らざるを得ません。しかし、トレーニングとして行う場合は正確なリピーティングを心がけてください。
また、言語化が難しい発話のリズムや強弱なども真似します。
ネイティブの自然な中国語を聞き、その意味内容をしっかり把握したうえで、発音、イントネーション、ポーズにいたるまで忠実に再現し、活字上は表れない感情やニュアンスを含め、その中国語に盛られたすべてを再生するトレーニングです。
これによって、中国語特有の発音やリズムの基本から、複雑なイントネーションのバリエーションまでを無理なく体得し、確かな中国語の運用能力を高めることができます。
■自分で録音して確認
正確に発話を再現できているかどうかは、できればネイティブや中国語の先生に確認してもらいましょう。難しければ自分で録音した音声を聴いてみましょう。
リピーティングをしているときうまくできていると思っても、往々にして正確に再現できていないことがあります。
さらに、自分の発話をお手本の音声と聴き比べることで、不自然なポイントや至らないポイントが明確になります。この振り返りがリピーティングの効果を高め、リスニング、スピーキングの能力が飛躍的に向上します。
5.リピーティングとシャドーイングの違い
シャドーイングとは一言でいうと「中国語での聞き取り・発話の両方を強化する練習法」のことです。リピーティングとのやり方の上での最大の違いは、シャドーイングでは基本的に音声を聞きながら発話を行う点です。
リピーティングと異なり、常に音を聞きながら(つまり見本を参考にしながら)発話を行うことができるので、短期記憶の強化には繋がりません。
両者の学習効果の違いをまとめると以下のようになります。
シャドーイング→短期記憶の強化よりも音声知覚の強化
リピーティング→音声知覚・意味理解よりも短期記憶の強化
難易度は、音声知覚と意味理解、さらには内容を記憶することも必要なのでリピーティングの方が若干高めです。
6.リピーティングにオススメの教材
トレーニング方法で説明した通り、リピーティングを行う場合、まずは精読、音読を行います。
そのため、ネイティブ音声はもちろん、読まれる中国語スクリプトがあり、単語リスト、ピンインが揃っているものが望ましいです。
また、リピーティングでは“話せる、聞ける”単語・表現を蓄積していくので、自分が使いそうな語彙を含むものを使いましょう。
そのような観点で以下の教材がおすすめです。
まとめ
いかがでしたか?中国語を“話せる、聞ける”ようになるため、リピーティングはとても学習効果の高いトレーニングです。
リピーティングには次の5つの効果があります。
- 効果1:リスニング力(音声知覚)
- 効果2:リスニング力(意味理解)
- 効果3:短期記憶力の効果
- 効果4:長期記憶力の強化
- 効果5:スピーキング(中国語化、音声化)
さらに、“話せる、聞ける”中国語力のレベルの指標ともなり、目標設定や現在地の確認ができることは最大の利点です。
もちろん、すぐに効果を感じられないかもしれません。しかし、根気よく、1日20~30分でいいのでコツコツ続けていきましょう。3ヶ月もすれば確実に成長実感が得られることでしょう。